かぐや姫:翁・媼との別れの物語

かぐや姫と別れの物語、どうして泣けるの?


タケル「なあミコ、かぐや姫って月に帰っちゃう話だろ? あれさ、なんであんなに泣けるのか、正直オレにはよくわからないんだけど」

ミコ「えー? あの別れのシーン、すごく切ないじゃない。育ての親と離れるなんて、あんなの絶対泣いちゃうよ」

タケル「うーん……オレだったら逃げ出すかも。でもさ、なんでかぐや姫は帰らなきゃいけなかったの? そんなに月がいいの?」

久遠先生「その質問、いいところに気づいたわね。『竹取物語』って、日本最古の物語とも言われていて、ただのファンタジーに見えて実はすごく深いのよ。今日は『かぐや姫と翁・媼の別れ』について、いろんな視点から話してみましょうか」


竹から生まれた姫、月から来た理由とは?


ミコ「そもそも、なんでかぐや姫って月から来たことになってるの?」

久遠先生「それはね、かぐや姫の正体が“月の世界”から来た“天人”だとされてるから。天人っていうのは、人間よりも高次元の存在と考えられていたの」

タケル「天人って、なんかカッコイイな。でもなんで地球に来てたんだよ?」

久遠先生「物語の中では、“ある罪”を犯したために地上に来させられた、ってされているの。ただし、その“罪”が何かははっきり書かれていないのよ」

ミコ「その罪、めっちゃ気になる! 恋愛関係かな……?」

久遠先生「可能性としてはあるわね。実はこの物語、ただのファンタジーじゃなくて、当時の仏教思想や死生観が反映されているという解釈もあるの」


別れのシーンに込められた意味


タケル「じゃあさ、なんで最後、あんなにあっさり月に帰っちゃうんだよ。オレだったら絶対残るって言うぞ」

久遠先生「そこがこの物語の深いところ。かぐや姫は地上の人間と心を通わせてしまったけど、天の者には地上に永遠に留まることは許されない運命だったの。だから彼女の帰還は“死”のメタファーと捉えられることもあるのよ」

ミコ「えっ、じゃあかぐや姫が月に帰るって、死ぬってこと?」

久遠先生「死ぬというより、あの世に戻るという表現のほうが近いかしら。つまり、翁や媼との別れは、実の親子ではないけれど、本当の“親子の死別”に通じる悲しみとして描かれているの」

タケル「なんか……切ないな。でもさ、かぐや姫って最後、泣いてた?」

ミコ「うん、泣いてたよ。しかも、自分の感情が消えてしまうことを知ってて悲しんでたの。薬の瓶を残していくところとか、もう……」

久遠先生「その“薬の瓶”も象徴的よね。永遠の命を意味する薬を、あえて地上に残していく。それは“人間らしさ”を選んだ証とも言えるのよ」


翁と媼の愛情と、かぐや姫の葛藤


タケル「そういえばさ、翁ってめちゃくちゃいい人だよな。姫のために立派な家建てたり、婿選びも守ったりしてたじゃん」

久遠先生「その通り。翁と媼のふたりは、血のつながりはなくても、親としてかぐや姫を育て、愛していた。その関係性が最後に別れで断たれることが、読者の涙を誘うのよね」

ミコ「でもかぐや姫も、冷たいわけじゃなかったよね。最後まで月に帰ることに悩んでたし、心残りがある感じだった」

久遠先生「そうなの。あの物語のポイントは“葛藤”なの。天上の者としての使命と、地上で得た人間的な感情との間で揺れ動いていた。それこそが、この物語に深みを与えているのよ」

タケル「つまり、かぐや姫って超難しい選択をしたってことか」

久遠先生「ええ。それが“別れの美学”とも言えるのよ」


歴史的背景と仏教思想の影響


ミコ「先生、さっき仏教思想って言ってたけど、それってどんな感じに出てるの?」

久遠先生「当時の日本では、仏教の“無常観”が広く浸透していたの。“この世はすべて移ろうもの”っていう考え方よ。かぐや姫が月に帰ることは、まさにその象徴。地上の幸せも永遠じゃないという教訓が込められているの」

タケル「なんか現実的だな……夢の話かと思ってたのに」

久遠先生「その夢と現実の境目をあいまいにしてるのも、この物語の魅力なの。人間世界と神の世界、現実と幻想、生と死。いろんな境界が重なって描かれているのよ」

ミコ「まさに“幻想文学”だね!」

久遠先生「その通り。しかも、これは平安時代の貴族社会や、女性の立場についても反映しているという研究もあるのよ」


かぐや姫は“自立した女性”?


ミコ「あっ、それってもしかして“女性が男に依存しない”ってこと?」

久遠先生「するどいわね。かぐや姫は、自分の意思で婿選びを断り、最終的に永遠の命をも拒むの。当時の物語としては、かなり異例な“自立した女性像”なのよ」

タケル「すげーじゃん、かぐや姫。オレ、昔は“美人でモテるお姫さま”ってだけだと思ってたけど、めっちゃ意志強いじゃん」

久遠先生「そういう印象に変わったなら、この物語の本当の価値が見えてきた証拠ね」


月に帰ったあと、かぐや姫は…?


ミコ「先生、最後に一つ聞いていい? かぐや姫って、月に帰ったあとどうなったの?」

久遠先生「物語の中では描かれていないけれど、きっと記憶を失って、感情も消えて、ただの“天の存在”に戻ったのでしょうね」

タケル「え……それって、なんか悲しくないか?」

久遠先生「ええ、とても悲しい。でもそれが、“別れ”の本質なのよ。人はいつか、大切な人と別れる。それを避けられないからこそ、今を大事にしなきゃいけない。そういう教訓が、1000年以上前の物語に込められているの」

ミコ「うわぁ……深い……」

タケル「オレ、かぐや姫ナメてた。今度読んでみる。マジで」


今の時代にも通じる“かぐや姫”の教え


ミコ「先生、最後に一言でまとめると、かぐや姫ってどんな物語なの?」

久遠先生「そうね。“永遠”よりも“人の心”を選んだ、ひとりの女性の物語かしら」

タケル「おお、名言!」

ミコ「かぐや姫って、恋も別れも全部経験した上で、月に帰っていったんだね……」

久遠先生「そう。だからこそ今の時代にも、すごく響くのよ。SNSでつながってるのに孤独を感じたり、いつまでも人と一緒にいられない現実に直面したり……。そんなときに、この物語はふと立ち止まるきっかけをくれるのよ」

タケル「なるほどなあ……月って、遠いだけじゃなくて、なんか悲しいんだな」

ミコ「でもその“悲しさ”の中に、ちゃんと“愛”があるんだね」

久遠先生「ええ、そう思うわ」

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