【都】怪談:カラオケの男

カラオケで出会った謎の男


ハルカ「ねえミヤちゃん、レイくん、この前見た怪談の動画で芸人さんが話してたやつ、めっちゃゾッとしたんだけど、聞いてくれる?」

レイジ「えっ、またかよ…。どうせ嫌だって言っても話すんだろ?」

ミヤコ「ふふ、よくわかってるじゃない。それでハルカ、今回はどんな話なの?」

ハルカ「えーとね、『カラオケの男』ってやつ。カラオケに行った人が、知らない男に部屋に勝手に入られて…で、話しかけたら返事はするけど、何を言ってるか意味がわからないの。しかも、そいつが部屋を出た直後、店員に聞いたら“誰も入ってない”って言われるの!」

レイジ「なんだよ、それ。ただの事件じゃないのか?やめてくれよ、そういうの。マジでカラオケ行けなくなるじゃん…!」

ミヤコ「ああ、その話ね。けっこう有名な話かもね。ある怪談の語り手が披露した中でも、かなり評価の高いやつ。登場人物のその“男”っていうのが人間っぽくないところがポイントね」

ハルカ「そうそう!喋ってるのに、何言ってるかわかんないって、なんか“言葉っぽい”けど“意味がない”って感じでしょ?あたし、あれ、逆にめちゃ怖かったんだよね」

レイジ「オレもそれちょっと思った。英語とかじゃないんだろ?なのに、“意味が通じない”のに“喋ってる”って、意味わかんないし…それって、人じゃないんだよな…たぶん」


“意味の通じない言葉”の正体


ミヤコ「こういう話の中で、“何かを喋ってるのに意味が伝わらない”って現象、けっこうよくあるの。怪談では“異界との接点”って意味を持たされることが多いのよ」

ハルカ「異界って…こっちじゃない世界ってこと?」

ミヤコ「そう。たとえば“神隠し”とか“時空の歪み”みたいな話でも、妙な言葉遣いの人が出てきたりするでしょう?あれって、“向こう側”の言葉を無理にこっちの人間が聞いたとき、意味が通じなくなるっていう考え方があるの」

レイジ「つまり、“その男”は人間じゃなくて、異世界の存在だったってことかよ?」

ミヤコ「可能性としては高いわね。あるいは“この世にもういない人”かもしれないけど、“幽霊”っていうより、“この世とあの世の狭間にいるもの”みたいな印象」

ハルカ「あたし的には、“ちょっとズレた世界の住人”ってイメージだったかも。見た目は普通だけど、どこかおかしい、みたいな」


“普通”に見える恐怖と違和感


レイジ「でもよ、そいつっていきなり入ってきたんだよな?ドア開けて?」

ハルカ「そう、勝手に入ってきて、普通に座って、飲み物のグラスとか勝手に飲んで…それでいきなり喋り始めたんだけど、内容がわかんないってやつ」

ミヤコ「そこが大事なのよ。“行動は普通だけど、言葉がおかしい”っていう違和感が、リアルな恐怖を作ってるの。いきなり血まみれの人が来るより、当たり前のことみたいに、何でもない風に入ってくる方がむしろ怖いでしょう?」

レイジ「わかる…。オレもホラー映画より、そういう“静かにおかしい”やつのほうがトラウマになる…」

ハルカ「あとさ、その男が部屋から出てってから、通路が長すぎるって言ってたじゃん?それもなんか変だったよね」

ミヤコ「そう。“異常に長く感じた”通路、しかも“姿が見えなかった”って証言から、あそこでもう現実じゃなくなってた可能性もある」

レイジ「え、じゃあそいつが入ってきた時点で、もうカラオケボックスじゃない別の場所に飛ばされてた、とか…?」

ハルカ「わ!そうなったら、どうやってこっちに戻って来れば良いのかわからないね!」


“カラオケ”という密室空間の怖さ


ミヤコ「ちなみに、カラオケって空間、怪談ではすごく使われやすいのよ。密室だし、音が外に漏れにくいし、ひとりでいると外界と遮断されやすい。しかも“時間制”だから、出るタイミングも逃しやすいの」

ハルカ「わかる!あたしも一人カラオケよく行くけど、たまに“自分以外の音が混ざった”って思うときあるもん」

レイジ「やめろー!カラオケ行けなくなるだろーが!」

ミヤコ「しかも深夜のカラオケって、防犯カメラの死角もあるし、事件も起きやすいの。だから、実際に“誰かが突然入ってきて襲われた”って事件もいくつかあるのよ」


実在の事件とのつながり


ハルカ「え、まさか本当にそういうことあったの?」

ミヤコ「2000年代初期から、全国のカラオケボックスで“従業員に成りすました人物”が部屋に侵入して事件を起こした例は複数あるの。特に大阪と名古屋では、密室性が犯罪に利用されやすいっていう警察の分析も出てる」

レイジ「それ、マジで怖すぎ…。じゃあ、この怪談の元って実話かもってこと?」

ミヤコ「怪談って“完全な作り話”に見えて、実際の事件や噂をベースにしてるものが多いのよ。この話も、実際に誰かが体験した話を脚色してる可能性は高いわ」

ハルカ「ってことは、幽霊とか異世界じゃなくて、“現実に存在する人間の怖さ”も含まれてるんだ…!」


“喋る男”が意味するもの


ミヤコ「この話の最深部は、男が“喋ってる”ってところなのよ。普通、そういう怪異って無言か、何か一言だけ言うイメージでしょ?でもこれは“普通に会話してる風”ってとこが異質」

ハルカ「しかも、こっちの問いかけには返してるんだよね?それで会話になってないって、めっちゃ不気味」

レイジ「オレ、それ見て“生きてた時の言葉しか喋れない幽霊”とか想像した。だから、今の時代とズレてて会話にならないとか…」

ミヤコ「面白い考え方ね。“幽霊は過去に縛られてる存在”だとしたら、“現在”と繋がるには無理があるのよ。だからこそ、喋ってるけど会話にならない、っていう状態になる」


“カラオケの男”が象徴する恐怖とは


ハルカ「結局さ、その“男”って、幽霊とかじゃなくて“何かよくわからない存在”ってのが一番怖い気がする」

レイジ「正体不明ってやつな。人間なのか幽霊なのか、はたまた別の何者なのかもわからないまま話が終わるのが、逆に一番怖いと思う」

ミヤコ「それが“真の怪談”なのよ。“説明がつかない”まま放置されるからこそ、人の心にも残り続けるの。逆に、こういう怪異っていうのは、はっきり正体がわかってしまった時点でもう怖くない存在になってしまうものだから」

ハルカ「なるほどー!だからこの話って、どれも“オチがない”んだね。でも、それがリアルでゾッとするっていうか」


日常のすぐ隣にある“非日常”


ミヤコ「この怪談が面白いのは、日常の中にほんの少しだけ異常が混じってるってとこなのよ。コンビニとか、電車とか、カラオケとか、よく行く場所ほど、“違和感”が怖くなる」

レイジ「いつもと同じ場所に、“いつもと違う何か”があるって、一番ゾッとするよな…」

ハルカ「ほんのちょっとだけ歪んでる世界に、あたしたちが気づかず入っちゃったのかもって思うとさ、ほんとに背筋ぞわってなるよね」

ミヤコ「そして出てきた“その男”は、もしかすると、今もどこかのカラオケの部屋で、誰かの前に現れてるのかもしれないわよ」

ハルカ「えー!めっちゃ怖いねそれ!あ、そうだ、せっかくだし今からみんなでカラオケ行こうよ!」

レイジ「え、はぁっ!?」

ミヤコ「それもいいわね。もし何かあっても私たちは女子トイレに逃げれば良いし」

ハルカ「そうだね!レイくんが謎の男を捕まえる係ってことで!」

レイジ「ちょっ、オレは絶対カラオケなんか行かないからなーーっ!」

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