神に裁かれた都市:ソドムとゴモラ

ソドムとゴモラって何の話?

タケル「なあミコ、ソドムとゴモラって知ってるか?なんか名前がカッコよかったから、ゲームの敵キャラかと思ってたけど、先生が聖書の話だって言ってたんだよな」

ミコ「知ってるよ。旧約聖書の中に出てくる伝説的な都市の名前。神様に裁かれて滅ぼされた町っていうことで有名なの」

タケル「えっ、裁かれたって、なんか悪いことしたのか?」

ミコ「うん、ものすごく。だけどただの犯罪とかじゃなくて、もっと深い話。倫理とか人間の在り方に関わるテーマなのよ」

久遠先生「その通りよ、ミコ。ソドムとゴモラは旧約聖書の『創世記』に登場する都市で、人々の罪深さが極まり、神がその堕落に終止符を打つ形で滅ぼしたとされているの。だけど単なる昔話じゃないのよ。この話には、宗教的・歴史的・道徳的な視点がいっぱい詰まってるの」


どこにあった?ほんとにあった?

タケル「でもさ、それって本当にあった町なの?それとも神話っぽい作り話?」

久遠先生「いい質問ね。実は、聖書ではヨルダン川の下流、死海の近くにあったとされているの。でも、今のところ確実にここだという場所は見つかってないわ」

ミコ「でもたまに発掘ニュース出るよね。『ソドムかもしれない都市遺跡が見つかった!』みたいな」

久遠先生「そうなの。特に“バブ・エド・ドラー”とか“ヌンムエイラ”っていう遺跡は、ソドムとゴモラに関係あるかもしれないって言われてきたのよ。どちらも死海の南部にあって、焼け焦げた建物の痕跡もある。火山の爆発か、隕石の衝突か、そういう自然災害で滅びた可能性も考えられてるのよ」

タケル「なんだ、じゃあ神様が怒って雷落としたわけじゃないんだ」

久遠先生「そう単純にも言い切れないのよ。古代の人々は、自然災害や大事件を神の意志として捉えることが多かった。たとえば雷、洪水、地震、火山噴火、全部“神の怒り”の表現として伝承に残されたの」

ミコ「現代の災害も、昔の人が見たら“神の罰”って思ったかもしれないもんね」

久遠先生「そう、だからこの話も、自然災害の記憶と宗教的メッセージが合わさって生まれたと考える学者も多いの」

どれだけ罪深かったの?

タケル「でさ、ソドムとゴモラってどんだけ悪かったの?ただ悪いだけで滅ぼされるとか、ちょっと怖いんだけど…」

久遠先生「たしかに、ちょっと極端に思えるかもしれないわね。でも旧約聖書では、ソドムの人々が“とても大きな悪”を犯していたとされてるの。人間関係が壊れ、正義や親切が無視され、暴力や搾取が横行していたという記述があるの」

ミコ「有名なのは、“客人に対するひどい仕打ち”よね。旅人が訪れたときに、彼らをもてなすどころか、乱暴しようとしたり」

久遠先生「そう。旧約聖書の創世記19章では、ロトという人物の家に天使の姿をした旅人が訪れるのだけど、町の男たちがその客人を乱暴しようと家に押しかけるの。それは当時の“もてなしの義務”を完全に踏みにじる行為だったのよ。つまり、ソドムは“信頼”や“善意”を持てない町になっていたの」

タケル「そんなことされたら、神様も怒るよな…でも、それで町ごと滅ぼすのはキツくないか?」

久遠先生「それについては、アブラハムと神との会話が重要になるの。アブラハムは神に“正しい者が町にいるなら滅ぼさないでくれ”と懇願するのよ。神もそれを受け入れて、“10人でも正しい者がいたら滅ぼさない”と約束する。でも、結局10人すら見つからなかったの」

ミコ「その時点でもう町としては限界だったのかもね…」

ロトと家族の脱出と振り向いた妻

タケル「でさ、ロトって誰なんだ?なんで彼は無事だったんだ?」

久遠先生「ロトはアブラハムの甥で、神に信頼された数少ない“正しい人”の一人。だから神は彼とその家族を救おうとしたの」

ミコ「で、有名なのがロトの妻の話。逃げる時に“後ろを振り向いてはいけない”って言われたのに、振り返っちゃって“塩の柱”になっちゃうのよね」

タケル「えっ!?塩の柱って何それ!?」

久遠先生「文字通り“塩の柱になった”と書かれているのだけど、象徴的な意味もあるの。振り返る=執着、つまり過去に引きずられて前に進めないことの警告として読まれているのよ」

ミコ「死海のあたりには実際、塩でできた岩がいっぱいあるから、昔の人がそれを見て“振り向いた人が塩になった”って言い伝えたのかもね」

タケル「でもさ、それって結構切ない話だよな…。逃げようとしてたのに、ちょっと見ただけでアウトなんて…」

久遠先生「たしかに厳しく見えるかもしれない。でもこの物語の根底には、“心の在り方”が大切ってメッセージがあるの。過去の悪に未練があるなら、それは新しい世界にふさわしくないという意味なのかもしれないわね」

神話と歴史、どこまで信じる?

タケル「こういう話って、どこまでがほんとで、どこまでが作り話なんだろな」

久遠先生「神話ってそういうものよ。事実そのものではないけれど、大切な真理や価値観を伝えるために作られるの。ソドムとゴモラの話は、人間の堕落、社会の崩壊、そしてそれに対する神の裁きという形で“悪の限界”を表現しているの」

ミコ「つまり、“こういうふうになっちゃダメ”って警告の物語でもあるのね」

久遠先生「そう。だけどその中にある“誰か一人でも正しい者がいれば救いはある”という希望も忘れちゃいけないのよ」

タケル「うーん、なんか昔話だけど、今にも通じるって感じだな」

久遠先生「だから長く語り継がれているの。歴史的な証拠がどうであれ、この物語が何千年も残ったのは、それだけ人の心に響くメッセージを持っているからなのよ」

ソドムとゴモラの現代的な意味

ミコ「今の時代だと、この話ってどう解釈されてるの?」

久遠先生「色々な角度から議論されてるの。たとえば、社会の道徳が崩れるとどうなるかとか、人間同士の信頼が失われたらどうなるか。現代でもいじめや差別、無関心が問題になってるでしょ?そういう現象に重ねて解釈する人もいるわ」

タケル「あとさ、最近はAIとかネットで何でもできるけど、その分、人とのつながりが弱くなってる気がする」

久遠先生「鋭い視点ね。便利さや自由が広がる一方で、人の心や責任が軽くなってるって指摘もあるわ。だからこそこの物語が問いかける“人間らしさ”って今でも重要なの」

ミコ「“正しい者が10人いれば町は救われる”って、なんかすごい言葉だね。たった10人でいいんだもん」

久遠先生「そう。だからあなたたちも、自分の行動が周囲に与える影響を大切に考えてほしいな。あなたたち一人一人が、誰かにとっての“正しい者”になれるのよ」

失われた都市はなぜ残るのか

タケル「結局、ソドムとゴモラって滅びたのに、今でも語られてるのって、やっぱ意味があるからだな」

久遠先生「その通り。滅んで終わったんじゃなく、“なぜ滅びたか”が記憶に残ったの。滅びた理由を知ることで、同じ過ちを繰り返さないようにする。それが歴史や神話の大きな役割なの」

ミコ「悲劇だけど、ちゃんと意味があるんだね」

久遠先生「そうよ。だからこそ私たちは今も、古代の物語から学び続けているの」

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